悪賢いウイルス!?

2005 / 11

秋も本番となり、本格的な「猫の風邪」シーズンを迎える前に、「猫ヘルペスウイルス」についてお話ししておきましょう。
このウイルスは、「猫の風邪」の原因のひとつであり、ちょっとかわった習性のある厄介ものです。

普通のウイルスは排除される?

一般的にウイルスは、生きた宿主(動物)の細胞に感染してはじめて、仲間を増やす=増殖することができます。
しかし感染すると、宿主の体には「炎症」という生体防御反応がおこるので、その炎症で感染細胞を破壊されるなどのことからウイルスが排除(追い出)され、さらには、細胞破壊のひどい場合には、宿主そのものまで死を迎えてしまうことすらあります。
つまり、増殖するために「感染」したのに、その感染でひき起こされる炎症によって、排除されたり、ときに宿主すら死亡させてしまうために、自己増殖の場を追い出されたり失ってしまう「おバカなウイルス」といえます。

悪賢いヘルペス

一方「ヘルペス」は、細胞に感染はするものの、宿主(ここでは猫)の免疫が強いなど、自分の増殖に不利な状態にあるときは、ウイルス遺伝子を宿主細胞の核に入り込ませ、宿主の炎症を調節する物質まで作り出し、あたかも健全な細胞であるかのように振る舞って潜んでしまいます。
そして、宿主の体調が悪いなど、免疫機能の低下を察知すると、ここぞというタイミングで、大量増殖し、ウイルスを排出。くしゃみ・鼻水・発熱・結膜炎など、激しい風邪の症状を引き起こします。
このようにヘルペスは、宿主の体内でうまく生き抜くための知恵をもった、たいへん「悪賢いウイルス」なのです。

感染してしまったら…

残念ながら、1度感染してしまうと、細胞に潜伏する状態が生涯続きますので、共存するほかありません。

ヘルペスとうまくつきあうために

ウイルスを活性化させないように配慮をすれば、たとえ潜伏状態であっても症状がでることを避けることが可能です。
寒さや栄養不良などに、注意してあげましょう。精神的なストレスも、生体の免疫機能を下げてしまうので、注意が必要です。
また、ヘルペスを完全に排除することは不可能ですが、ワクチンを接種することにより、症状を軽減し回復を早める効果が期待できます。

冬を迎える前にワクチン接種

当院では、日本国内で発生しているヘルペスを用いたワクチンをメインに使用しています。
毎年風邪をひいてしまう猫ちゃんには、本格的な冬を迎える前にワクチン接種をしておきましょう。

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